事業譲渡と出資金譲渡の違いと適用ケース

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事業譲渡と出資金譲渡の違いと適用ケース

コラム | 2025.02.07

 今回は、医療法人のM&A(事業継承)における「事業譲渡と出資金譲渡の違いと摘要ケース」というテーマで掲載します。M&Aを実際に進めていく段階でよく受けるご質問事項の一つです。

 

 医療法人のM&A(事業継承)において、事業の継承方法として「事業譲渡」と「出資金譲渡」の二つの手法がよく用いられます。どちらの手法を選択するかによって、法的・税務的な影響が異なります。以下では、事業譲渡と出資金譲渡の違いを整理し、それぞれの適用ケースについて解説します。

1.事業譲渡と株式譲渡の基本的な違い

項目

事業譲渡

株式譲渡

譲渡対象

   事業の一部または全部(資産・負債・契約など)

    医療法人の出資金(経営権を含む)

手続きの複雑さ

   必要な契約や許認可手続きが多い

    比較的簡便

承継する負債  

   買い手が選択できる

    原則医療法人のすべての負債を継承

契約関係の引継ぎ

   原則、取引先との個別承諾が必要

    医療法人自体が存続するため不要

従業員の引継ぎ

   個別同意が必要

    医療法人ごと継承されるため変更なし

税務上の影響      

   売り手に所得税や法人税が課税される

    原則、売り手の出資者に譲渡所得税が課税される

 

2.事業譲渡が適用されるケース

1)特定の事業のみを売却したい場合

① 事業全体ではなく、一部の事業や部門のみを譲渡したい時。

② 例えば、医療法人が特定の診療科やクリニックのみを売却するケース。

2)不要な負債や契約を引き継がせたくない場合

① 買い手が不要な負債や契約を引き継がずに事業のみ取得できる。

② 一部の契約や資産のみを選択的に引き継ぐことが可能。

 

3)新法人や別法人で事業を継続したい場合

① 事業を買収後、新たな法人に統合する場合や、別法人の資産として運営する場合。

 

3.出資金譲渡が適用されるケース

1)医療法人全体の経営権を売却したい場合

① 医療法人全体を売却し、買い手がそのまま事業を継続したい時。

② 医療法人の持分譲渡や、病院、診療所を含む法人全体のM&A(事業継承)をしたい時。

2)手続きを簡便に済ませたい場合

① 契約や許認可の再取得が不要なため、スムーズに譲渡が可能。

② 取引先や従業員との契約関係がそのまま継続される。

3)事業の信用やブランドを維持したい場合

① 医療法人名や取引先の信頼関係をそのまま引き継ぐことができる。

② 医療機関のように患者との長期的な関係が重要な業種で適用される。

 

4.まとめ

 事業譲渡と出資金譲渡は、それぞれメリット・デメリットがあり、状況に応じた選択が必要です。

 事業譲渡:事業の一部売却や負債の引継ぎを回避したい場合に適している。

 出資金譲渡:医療法人全体をそのまま引き継ぎ、手続きを簡略化したい場合に適している。

 どちらの手法を選ぶべきかは、目的や条件によって変わります。M&A(事業継承)を進める際には、専門家と相談しながら適切な方法を選択することが重要です。

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