今回は、「経営の安定を持続するため、M&Aを通じて構築する病院の新たな事業モデル」というテーマで掲載します。
日本の病院経営は、少子高齢化や医療費抑制政策、医療従事者の不足といった課題に直面しています。これらの状況を踏まえ、病院経営の安定を持続するためには、従来の運営モデルに加え、新たな事業モデルを積極的に取り入れる必要があります。自院のみでは困難、もしくは時間がかかる場合でもM&A(事業継承)を活用することで実現、もしくは時間の大幅な削減をすることも可能です。以下では、病院経営の安定を持続するための新たな取り組みについて考察します。
1.持続可能性を高める事業モデルの必要性
1)医療費削減の圧力
診療報酬改定により、病院の収益構造が大きな影響を受けています。持続可能な経営のためには、コスト削減だけでなく新たな収益源の確保が重要です。
2)地域医療構想への対応
地域医療構想では、病床機能の再編が進められており、病院は地域の医療ニーズに適応した運営モデルを構築する必要があります。
3)患者ニーズの多様化
高齢化社会に伴い、予防医療や在宅医療、リハビリテーションなどの需要が増加しています。これらに対応するサービスを提供することが求められます。
2.新たな事業モデルの具体例
1)予防医療と健康管理サービスの強化
予防医療や健康増進プログラムを提供することで、患者の健康寿命を延ばし、医療費削減に貢献します。具体例として、健診センターの設置や、運動療法プログラムの導入が挙げられます。
2)在宅医療と訪問診療の拡充
高齢者の増加に伴い、在宅医療の需要が高まっています。在宅医療専門チームを編成し、訪問診療や訪問看護を充実させることで、患者の満足度を向上させると同時に収益源を多様化できます。
3)デジタルヘルス技術の活用
AIやIoT、遠隔医療などのデジタル技術を活用することで、効率的な医療提供が可能になります。遠隔診療プラットフォームの導入や、患者データを活用したパーソナライズド医療の提供が注目されています。
4)医療と福祉の連携強化
医療と福祉サービスを一体化した施設の運営や、地域包括ケアシステムへの参画を通じて、高齢者や障害者支援を強化します。これにより、地域社会全体での医療負担の軽減を図ります。
5)多職種連携型のチーム医療
医師、看護師、薬剤師、リハビリ専門職など、多職種が連携して患者ケアにあたることで、医療の質を向上させます。このモデルは、特に慢性疾患や高齢者医療において有効です。
3.成功事例
ある地方病院では、デジタルヘルス技術を活用した遠隔診療サービスを導入しました。このサービスにより、医療アクセスが困難な地域住民にも高品質な医療を提供できるようになり、患者満足度が向上しました。また、健診センターを併設し、予防医療を積極的に推進することで、地域全体の健康意識の改善に貢献しています。
4.新たな事業モデルを推進するための課題
1)初期投資と運営コスト
新たな事業モデルの導入には、多額の初期投資が必要です。これを賄うための資金調達やコスト削減計画が求められます。
2)人材不足への対応
新たな事業モデルを実現するためには、専門性の高い人材の確保と育成が重要です。
3)法規制への適応
医療法や診療報酬制度など、既存の規制に適応しつつ新たな取り組みを進める必要があります。
上記の課題の解決にはM&A(事業継承)が有効な手段になります。
5.まとめ
病院経営の安定を持続するためには、従来の運営モデルにとらわれない柔軟な発想と、新たな事業モデルの積極的な導入が不可欠です。予防医療や在宅医療、デジタルヘルス技術の活用といった取り組みを通じて、地域社会の医療ニーズに応える病院経営を目指すことが重要です。こうした変革が、病院経営の安定を持続するためには不可欠です。