今回は、「病院、診療所のM&Aにおける医療機器やシステムの統合」というテーマで掲載します。
病院、診療所(クリニック)ののM&A(事業継承)では、医療機器やシステムの統合が大きな課題の一つです。これらの設備やシステムは、診療の質や業務効率に直結するため、適切な統合が求められます。以下では、医療機器やシステム統合の重要性、課題、成功のポイントについて解説します。
1.医療機器・システム統合の重要性
1)診療の継続性確保
医療機器やシステムがスムーズに統合されていないと、診療の中断や遅延が発生する可能性があります。特に、検査機器や電子カルテの不具合は診療業務に直結するため、早急な対応が求められます。
2)コスト効率の向上
重複する機器やシステムを統合することで、維持管理コストを削減できます。ただし、不必要な削減が医療の質を低下させないよう注意が必要です。
3)業務効率の向上
統合されたシステムは、従業員が情報にアクセスしやすくなるため、診療や事務業務が効率化します。
2.統合における主な課題
1)異なる機器・システムの互換性
M&A(事業継承)元と先の医療機関が異なるメーカーの医療機器や電子カルテを使用している場合、互換性の問題が生じることがあります。
2)高額な統合コスト
統合に伴う新たな設備投資や、システムのカスタマイズに多額の費用が発生する場合があります。
3)従業員の習熟度
新しい機器やシステムを導入した場合、従業員がそれに習熟するまでの時間がかかります。これが診療の遅延やエラーを引き起こすリスクとなります。
4)データ移行の困難さ
電子カルテや患者記録の移行にはデータの欠損や重複のリスクが伴います。また、移行作業中に診療が中断しないような計画が必要です。
3.医療機器やシステム統合のステップ
1)現状の把握
①統合対象となる医療機器やシステムの種類、性能、互換性を徹底的に調査します。
②各機器やシステムが満たすべき法的要件(医療機器認証など)を確認します。
2)統合計画の立案
①新しいシステムや医療機器の導入範囲を決定し、必要なコストや期間を見積もります。
②システムや医療機器を使用する現場の意見を取り入れ、実用性を重視した計画を作成します。
3)専門家の活用
IT専門家や医療機器メーカーの技術者と連携し、互換性や性能評価を行います。また、データ移行や設定に必要な技術サポートを依頼します。
4)従業員教育と運用テスト
①統合後の新しい医療機器やシステムの使い方について、全従業員へのトレーニングを実施します。
②本格運用の前に、テスト期間を設けてシステムや機器の動作確認を行います。
4.成功事例:地方病院の医療システム統合
背景
ある地方病院が地域密着型のクリニックと統合しました。双方の医療機器や電子カルテシステムが異なり、統合には多くの課題がありましたが、以下の手順を踏むことでスムーズな移行が実現しました。
1)既存システムの互換性確認
まず、両者の電子カルテや検査機器がどの程度互換性を持つかを評価。双方のデータ形式を統一するため、システムカスタマイズを実施しました。
2)共通のプラットフォーム導入
診療情報の共有を可能にするクラウドベースのプラットフォームを導入。これにより、両施設のスタッフがリアルタイムでデータにアクセス可能となりました。
3)従業員トレーニングの実施
新しいシステムや医療機器の使い方について、全スタッフに徹底的な研修を実施。実践的なシナリオを用いた訓練を行いました。
結果
統合後、診療の効率が向上し、患者満足度が高まっただけでなく、システムや医療機器の維持費も削減することが可能になりました。
5.医療機器やシステム統合の成功ポイント
1)柔軟なアプローチ
完全な統合にこだわらず、必要に応じて部分的な統合を選択することでコストと時間を節約できます。
2)地域医療ニーズの反映
統合後の診療方針に基づき、地域のニーズに適したシステムや医療機器を選択することが重要です。
3)長期的な視点
短期的な費用削減にとらわれず、長期的な運用効率や患者ケアの向上を優先します。
6.まとめ
システムや医療機器の統合は、病院、診療所のM&A(合併、買収)における重要なプロセスです。適切な計画と専門家の協力を得ながら進めることで、診療の質を維持しつつ、効率的な運営を実現することが可能です。M&A(事業継承)は、単なる経営統合ではなく、地域医療を支える新たな仕組みを構築するチャンスです。その基盤として、システムや医療機器の統合を戦略的に進めることが重要です。