M&A(事業継承)における買収先医療法人の財務分析について

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M&A(事業継承)における買収先医療法人の財務分析について

コラム | 2024.12.06

今回は、医療法人で運営する病院及び診療所をM&A(事業継承)で買収する際に買い手側が行う買収先医療法人の財務分析について記載します。また、弊社でも案件を頂いた時に簡単に行ってからご紹介させて頂いております。具体的な手順・内容は下記の通りです。

 

1、安全性分析

 高い収益性があっても、多額の借入金がある場合は法人の財務内容は非常に不安定であり、1度の経営判断の失敗により、資金繰りに支障が生じ、経営破綻のリスクが高まってしまいます。 従って、M&A(事業継承)では、買収先医療法人の財務に関する安全性を十分に検討し、その強み、弱みを事前に把握しておく事が必要です。財務の安全性を分析する手法としては、以下のようなものがあります。

 

  ①自己資本比率=自己資本/総資本×100

注1:総資本=自己資本+他人資本(流動負債+固定負債で返済する必要があります)

注 2:他人資本に属する借入金は利息を支払う必要がありますので、自己資本比率が高いほど財務上の安全性は高くなり、一般的には20%以上が望ましいと言われています。

 

  ②固定長期適合率=固定資産/(自己資本+固定負債)×100

注1:長期にわたって使用される固定資産は、自己資本や長期返済の資金で賄う事が重要です。

注2:この比率が100%を超える場合は、固定資産への過大投資を示しており、利益による返済が負担となります。

 

  ③流動比率=流動資産/流動負債×100

注1:資金繰りを見る指標で、流動負債(買掛金、短期借入金等原則として1年以内に支払う必要のある負債)の支払い能力を示しています。この比率は高いほど良いとされていますが、一般的には150%以上であればまずは安全と判断されます。

 

  ④職員の定着性分析={1―(期中退職者/職員数)}×100

注1:職員の確保は医療法人運営を永続的に実施するうえで重要な項目ですので、その定着性を分析する必要があります。

 

 

2、収益性分析

 医療法人は出資者である社員や理事長、銀行等の金融機関から調達した資金を活用して運営し、利益を創出しています。 その医療法人がどの程度の収益力があるかは非常に重要な項目です。従って、M&A(事業継承)では、買収先医療法人の収益性を十分検討し、その強み、弱みを事前に把握しておく事が必要です。この収益性を分析する手法としては、以下のようなものがあります。

 

  ①総資本医業(経常)利益率=医業(経常)利益/総資本×100

※医業利益=医業収益―医業費用  

 経常利益=医業利益+医業外収益―医業外費用 

 注1:この比率は、医業活動から創出した利益と、これに使用した資本の割合を示すものであり、医療法人の経営効率を測定する重要な指標ですが、一概に高ければ良いとは言えません。

 

  ②医業収益対医業利益率=医業利益/医業収益×100

注1:下記③総資本回転率との関連で適正性を判断します。

 

  ③総資本回転率=医業収益/総資本

注1:総資本回転率が低い場合には、一般的に過大投資の状態を示していることになります。医業利益率が平均的で総資本回転率が高い場合は、設備の老巧化、陳腐化またはリースの残高等を考慮して適正性を判断することになります。

 

 

3、生産性分析

 M&A(事業継承)では、買収先医療法人の経営がどれくらい効率的に運営されているか、またどれだけ高い付加価値を創出しているかを示す生産性の状況を把握しておく事が重要です。生産性を分析する手法としては、以下のようなものがあります。

 

  ①資本生産性(設備投資効率)=付加価値額/総資本×100

※付加価値=医業収益―(材料費+経費)

注1:総資本がどれだけの付加価値額を創出したかを把握し、生産性と経営効率の適正性を判断します。

 

  ②付加価値率=付加価値額/医業収益×100

注1:医業収益がどれだけの付加価値額を創出したかを把握します。付加価値率が低下傾向にある場合は、経費の増加もしくは材料費の増加等、その増加要因を確認します。

 

  ③病床1床当たりの付加価値額=付加価値額/年間平均稼働病床数(病院の場合)

注1:稼働病床1床当たりの付加価値額で病床の生産性を把握します。

 

  ④労働生産性=付加価値額/年間平均職員数

注1:職員1人当たりの付加価値額で労働生産性を把握します。

 

  ⑤労働分配率=人件費/付加価値額×100

注1:付加価値額が人件費にどれくらい分配されているかを把握して、労働分配の適正性を判断します。

 

  ⑥職員1人当たりの医業収益=医業収益/年間平均職員数

注1:労働の生産性を示す指標ですが、この指標は病院、診療所の種類。規模によって異なります。

 

 

4、費用の適正性分析

 医療法人の運営においては、その施設(病院、診療所)の種類、規模に応じて費用の種類、額も様々です。従って、M&A(事業継承)では、その買収先医療法人の運営にかかる費用の内容を把握しておく事が重要です。費用の適正性を分析する手法としては、以下のようなものがあります。

 

  ①損益分岐点収益=固定費/{1―(変動費/医業収益)}

※変動費=材料費+外注費等(収益と伴に変動する費用)

 固定費=総費用―変動費

     注1:損益分岐点収益は、損益がトントンとなる収益額のことです。実際の医業収益額と損益分岐点収益との差額で収益力と安全性を判断します。

 

  ②変動比率=変動費/医業収益×100

注1:変動比率が低い場合は、固定費の内容を精査して外注化等の検討をします。

 

  ③人件費率=人件費/医業収益×100

注1:職種別人件費を給与水準、昇給ベース、平均年齢等から適正性を判断します。

 

  ④材料費率=材料費/医業収益×100

注1:材料費がどれくらい使われているか、または患者1人1日当たりの材料費や医薬品費と材料費の区分等の関連で、その適正性を判断します。

 

  ⑤給食材料費率=給食材料費/医業収益×100(病院の場合)

注1:入院患者1人1日当たりの給食材料費との関連で、その適正性を判断します。

 

 

 以上が主な財務分析の内容です。他にも成長性の分析や病院の場合、収益性の分析を外来収益と入院収益に区分して分析する等の手法がありますが、概ね上記の内容の分析を実施することで買収先医療法人の財務の状態は把握することが可能になります。

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