M&A(事業継承)においては「機密保持」が大変重要な要素となります。売り手の経営者にとっては、孤独感や不安等心理的にかなりの負担を生じます。M&A(事業継承)が成立するまでには、長い場合1年以上を要する場合もあり、この間、現在病院に勤務している職員や取引先等周囲に秘密にするには、強い精神力と厳密な機密保持が必要になります。もし売却の動きが周囲に知られてしまいますと、M&A(事業継承)どころか、以後の病院の経営にも重大な影響を与えることになります。従って、M&A(事業継承)を進めていくには、経営者のみならず関係者全員が機密保持に細心の注意を払うことが重要です。
具体的な対策としては、アドバイザーとの接触を、連絡をすべて病院外をベースにして病院の時間外を原則とすることです。電話、FAX、電子メール等の連絡は経営者の携帯、自宅FAX等すべて別ルートにして、面談等の打ち合わせはアドバイザーの事務所かホテルの喫茶室等で行うようにします。このような細かい取り決めは、通常はアドバイザーが依頼を受託する際に詳しく説明します。このような事前説明がない上に、病院の営業時間中に社名を名乗って病院に電話してくるようなアドバイザーであれば即刻替えるべきです。
また、売り手の経営者と同様に、買い手の経営者にとっても推進中のM&A(事業継承)に関して機密保持を徹底することは最重要な要素となります。特に売り手病院が経営上何も問題がなく、後継者が不在で売却先を探している場合等は情報が漏れることにより、身売りの噂が立ってしまい、売り手病院の信用不安を引き起こす危険性も出てきます。従って、売り手病院の信用保護の観点から機密保持には細心の注意を払う必要があります。
具体的な対策としては、院内で情報にアクセスできる職員を限定しておき、その他の職員には一切知らせてはいけません。アドバイザーとの連絡や打ち合わせは、売り手病院のように社外をベースに、時間外を原則にする必要はありませんが、打ち合わせには関係者以外入れてはいけません。打ち合わせの場所は、関係者以外に聞かれない場所に限定する必要があります。電話も周囲に聞かれないように別室から電話するようにして、アドバイザーからかかってきた場合は、一旦電話を切って別室からかけ直すといった細心の注意が必要です。
またM&A(事業継承)に関連する資料の管理も厳重にする必要があり、不用意に机の上に放置せず、手元の検討資料には売り手病院の実名を入れないようにします。実名が表記されている書類は別室のみで読むようにして、保管も必ず施錠できる引き出し等を使用するといった機密書類を扱うのと同様な細心の注意が必要です。