M&Aの資産基準+営業権方式とは

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CALCULATION

資産基準+営業権方式

Calculation

資産基準+営業権方式

資産基準+営業権方式(時価純資産額+営業権方式)は、
貸借対照表上の資産・負債に基づくものであるため、日本企業にとっては
比較的理解しやすく、なじみやすい価格算定方式です。
時価純資産の純資産とは、資産の総額から負債総額を差し引いた金額、
すなわち自己資本を指し、継続企業では株主持分に相当する部分のことです。
資産基準+営業権方式では、この純資産簿価を修正して
買収価格を算定するもので、個々の有形、無形の資産の市場価格から
負債分を差し引いた金額を買収ターゲットの企業価値とします。

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Forecast

残存価値の予測

個々の資産、負債の市場価格を算定するに当たって、
原則として再調達原価、すなわち再度取得するにはいくらを
要するかという観点から評価を行います。

この方法は、前述の買収事例比較方式、あるいはDCF方式と比較して買収ターゲットの貸借対照表の分析が重要になります。近年の企業会計原則は時価会計や現在価値概念をかなりの程度取り入れているとはいえ、依然として一部の資産の評価について取得原価主義が残っていますが、取得原価主義では、デフレ・インフレや市場の需給関係による価格の上昇や下落は財務諸表には反映されません。
従って、純資産方式では、個々の貸借対照表の項目ごとに分析が必要になります。

貸借対照表項目の修正

  • 未収入金
    将来の現金回収額の現在価値で評価します。
  • 棚卸資産
    期限切れ等の薬品や診療材料を考慮します。
  • 前払費用
    買収後に引き継ぎ不能な分を差し引くことが必要です。
  • 土 地
    公示価格等を参考にしながら類似取引比較によって時価算定します。
  • 建 物
    再調達原価で評価した後、老巧化がもたらす価値減少を考慮すること。
  • 医療機器
    再調達原価から減価分を割り引いて評価します。リース料の項目をチェックして医療機器があった場合、買収後も使用するものであれば、資産・負債(リースの残額)の両建てとして考える。また、買収後、使用不可能な機械であれば、負債として買収価格から差し引く等の交渉が必要になります。
  • 商標・営業権
    実務上、営業権の価値の算定方法として、利益年買法(過去純利益の3~5年分)や患者数等をもとにした営業量基準法、買収病院の収益性が高い場合の超過収益還元法等の算定方法があります。いずれにせよ、一つの算定方法で決定するのではなく、複数の算定方法で算出し、それぞれを参考にしながら平均値を用いたりなどして適正価格を決定します。
  • 負 債
    資産・負債側に計上されている繰延税金に注意する必要があります。また、負債の中で最も重要なものは、退職給与債務等のオフバランス債務です。

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Goodwill

営業権について

  • 営業権の認識と価値

    医療法人のM&Aにおいても、一般企業のM&Aと同じように買収対象医療法人において「営業権」としての価値が存在するかどうかということについて当事者間で議論されることが多いです。営業権の認識如何により、買収価格の算定に大きな影響を及ぼすからです
    営業権とは、法人の経営活動における超過収益力のことを言います。超過収益力とは法人の評判・信頼・顧客関係などを資本化したものの総称であり、一種の無形固定資産に分類され、換価処分価値が伴うものでありません。
    医療法人の場合には、例えば有名あるいは優秀な医師の存在や困難な手術の症例件数、立地条件、患者そして社会的信用力など、いろいろな要素が考慮されます。
    また、営業権の価値は、一般に「超過収益力の額の認識」、「超過収益力の移転可能性」そして「超過収益力の持続可能性」の3要素が存在する場合に算定されます。それぞれの要素については一般的に次のように考えられています。

  • 超過収益力の額の認識

    超過収益力の額は、評価対象となる営業に関する平均的な収益力を上回る利益額であり、営業権の価値を評価する際の最も重要な要素です。
    従って、買収対象医療法人の医療に関する諸活動により得られる収益力が、他の医療法人の平均的な収益力の水準程度しかない場合には、営業権の評価はしない場合が一般的です。

  • 超過収益力の移転可能性

    出資持分の譲渡によって買収対象医療法人の「収益力の源泉」が、譲受者に移転可能な場合に限って、営業権の譲渡が認識されます。つまり、現在の超過収益力が現在の所有者には発揮できたとしても、買収した後では、その超過収益力が十分発揮できないような場合には、営業権に関する評価額は算定されません。

  • 超過収益力の持続可能性

    超過収益力が現在は存在しているとしても、将来的に継続して存在し続けることが可能かどうか、また存在し続けるとしてもどれくらいの期間存在するのかにより、その価値が大きく異なってきます。理論上は、超過収益力の持続期間が長い程営業権の価値が大きくなるが、実務上はその持続期間を客観的に予測することは難しいことから、一般的には3年間や5年間等、当事者の合意により一定の期間持続するという前提を置いた上で計算が行われます。

  • 営業権の算定方法

    営業権の評価方法には、病院の標準計上利益をもとに持続年数を考慮して算定する年買法や超過収益を資本還元する超過収益還元法、患者数や医業収入をもとに算定する営業量基準法などがあり、またそれらを折衷する方法もあります。
    実際の営業権算定実務においては、標準経常利益をもとに持続年数(3~5年)を乗じて算定する年買法が一般的です。実際の算定においては、役員報酬等標準経常利益算定影響を与える項目を詳細に分析して、超過収益部分を明確にすることと、譲渡後の前経営者側の引継ぎ・フォローによる持続年数の十分な確保等の事前協議等を同時に進めていくことになります。

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Pros and cons

収益基準方式(DCF方式)
の長所・短所

資産基準+営業権方式の長所

  • 赤字病院や経営者の節税のため損益計算書の信頼性が比較的低いオーナー病院等を評価するのに有効な手段。
  • 買い手は、買収後に病院を解散したとしても得られる最低限の価値を把握でき、買収に対する安心感を得られる。
  • 買収後、税務上の目的や会計上の開始貸借対照表を作成するために、買取価格を個々の資産に配分することが必要になるが、資産基準+営業権方式はこの作業を容易にする。
  • 買い手と売り手の間で、無形資産の価値や簿外債務について個別の項目ごとに、議論、交渉するベースを提供する。
  • 買取資金を借入れにより賄う場合、金融機関の担保設定のための資料を提供する。
  • 売り手は解散価値、すなわち買収病院を解散する際に得られる清算価値と売却額との差額を容易に把握できるので、売り手に対して売却を促す際の説得材料提供できる。解散価値を算定する場合、継続病院を前提とする無形固定資産はゼロと評価される。

資産基準+営業権方式の短所

  • 個々の資産の評価は、病院全体としての価値を反映しない。
  • 個々の資産の評価は、まちまちであり、首尾一貫性に欠ける。
  • 資産基準+営業権方式では、特に重要な無形資産の評価は実は最も評価が主観的となり、結果として算定額が信頼性に乏しい場合が多い。

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